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最高裁判所第二小法廷 昭和28年(あ)5579号 判決 1956年4月13日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人白畠正造の上告趣意について。

所論第一点は、単に、原判決が示した昭和二八年法律第一九五号による改正前の刑法第二五条第一号に関する法令解釈の違法を主張するもので、刑訴四〇五条の上告理由に当らないのみならず、この点に関する原判示「刑法第二十五条第一号にいわゆる前に禁錮以上の刑に処せられたことなき者とは、現に審判すべき犯罪につき、刑の言渡をする際にその以前に他の罪につき確定判決により禁錮以上の刑に処せられたことのない者を指すのであって、既に刑に処せられた罪が現に審判すべき犯罪の前に犯されたと後に犯されたとを問わない、」旨の判断は正当であって、同条号の「前ニ」というのは現に審判を受くべき事件の言渡の時を標準として定むべきものでなく、現に審判を受けんとする罪の犯されたる時即ち犯罪自体の時を標準として決定すべきであるという所論は法条の文義に添わない独自の見解であって採るを得ない。それ故所論は理由がない。

同第二点は、原審において執行猶予すべき事情の調査について審理不尽の違法があるというに止まり適法な上告理由とならない。

同第三点は前記第一点に示した法令解釈の違法を前提とする違憲の主張であるから前提において採用できないこと前記のとおりである。

よって刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田 克)

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